在宅療養について
・家族が全部の介護をするのは無理なので、ヘルパーなどの介護スタッフは不可欠となり、
 また家族の介護ができない場合、それなりの介護チームが必要となる。自宅を使わない
 場合、一人で借家、あるいは複数でのシェアハウスを使っての介護体制もある。
・下記介護スタッフの確保と準備や計画をしっかりと立てる
 保健士、ヘルパー、看護士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、マッサージ士、
 医師、福祉用具業者、ケアマネージャー

1.退院の可否の判断基準
@患者と家族に在宅療養の希望がある
A相談や往診を依頼できる主治医がいる
B緊急入院が可能なベッドが確保されている
C病院から充分な退院指導が受けられる
D訪問看護等の在宅支援体制がある

2.退院が可能となる条件
@移動手段、呼吸管理・栄養管理コミュニケーション方法の確立
A在宅支援体制の確立
B本人・介護者が不安に思う点への対応
C治療を要する感染症呼吸困難や癒痛への対応

3.在宅呼吸療養移行時に医療機関に確認しておくべきこと
@現時点での身体機能精神機能、合併症の有無
A今後の進行予測(リルゾールを内服していても症状の進行は止められない)
B起こりうる合併症(肺炎,無気肺,滲出性中耳炎など)
C予測される介護負担(四肢のマッサージ、屈伸、体位交換、吸引の要求増加)
Dかかりつけ医との役割分担(訪問診察、カニューレ交換、胃ろうチューブ交換、専門医の診察)
E在宅支援体制(訪問看護師,ヘルパー,ケアマネージャー,臨床工学技士など)
F緊急時の対応や連絡方法
Gレスパイト入院の方法
H吸引指導を受ける(患者さんごとに体調や吸引方法に違いがある)
I呼吸補助機器の管理とメンテナンス
 ・機種の大きさや操作のしやすさ、深呼吸機能の有無、騒音の程度、3電源使用可能
  (AC電源・バッテリー・車でのシガーライター電源)かどうか、内部バッテリーの容量、外部バッテリーの種類
 ・呼吸回数や換気量などの設定・回路の接続方法と消毒方法・使用済み回路の処理方法・アラームへの対応方法
 ・加温加湿器の管理方法・バッテリーの管理方法と接続方法・回路やフィルターなどの供給体制
  メンテナンスの時期と連絡先・緊急時の連絡先・呼吸補助機器を使用する部屋の電気容量
 ・蘇生バッグの使用方法
J衛生材料と供給体制(吸引器・吸引チューブ・消毒液・蒸留水・ピンセットまたは手袋など)
 TIV導入後は,気管カニューレのカフエア管理用注射器・固定ひも・気切口の消毒液・消毒用綿棒・Yガーゼなど

これらは入院医療機関と地域の関係機関スタッフが合同カンファレンスを開催して,スタッフ間で情報の
共有と役割分担や連絡方法の確認などをするが、退院準備の指導開始時と退院直前の2回は必要。

4.在宅呼吸療養中のALS患者の精神的支援とQOL向上
 ・呼吸補助しながらの外出
 ・訪問ボランティアによる音楽療法
  在宅療養の工夫について

〔参考文献〕
1)近藤清彦・新改拓郎・石崎公郁子 呼吸器装着ALS患者の四肢・球筋機能の予後の検討
 厚生省特定疾患「特定疾患に関するQOL研究班」平成10年度研究報告書 p.211-217.
2)近藤清彦 ALS患者の在宅ケア 坪井栄孝監修/田城孝雄編 在宅医療ハンドブック
 中外医学社,pp.314-325 2001.
3)日本看護協会編 人工呼吸器装備中の在宅ALS患者の療養支援
 訪問看護従事者マニュアル 日本看護協会出版会 2004.